エアライフルの情報を求めて本やネットを彷徨うと、「グルーピング向上の為、ペレットの重量選別を!」 みたいな意見があると思います。 それで豆鉄砲もドコかで見た記憶があるんですが、カットされたペレット内部に気泡が存在する写真を見た コトがあって、そう言う写真を見ると「ほうほう、こりゃ〜重量選別しなきゃダメだな〜」なんてソノ気に なったりしてしまいます。(笑) とは言え、そう言う写真に感化されてペレットの重量選別を始めた方も、しばらくすると、それがあまり 意味の無いコトだと気付き始めます。 と言うのも、実際に選別しても、無選別でも、グルーピングは変わらないからなんです。 と言う訳で、ペレットと、その重量誤差についてのお話です。 ペレットの重量誤差 〜気泡〜 実際にペレットに気泡が存在する場合、その重量誤差はどの程度になるのか・・・?と言うコトと、重量誤差が ある場合、ペレットにはどの程度の大きさの気泡が存在するのかについて、どこかに情報がありそうなモノなん ですが、コレが意外と見つからないんですよね〜。 と言う訳で、「情報が無いなら自分で調べればいいじゃない(マリーアントワネット風)」の精神で早速計算です(笑)。 まずペレットの素材ですが、コレは鉛がベースになっていて、ソコに各種の金属が入った鉛合金のようですが、 その配合比みたいな情報も無いですし、材料の密度も公開されていないので、ここはひとつ、鉛の密度の11.34g/cm3 を基準に考えます。 ※重量と体積を調べれば密度は簡単に求められますが、モノによって配合比が違う可能性もあるのと、今回はモデル ケースとしてのデータが欲しいので却下。 そして0.1gr単位で、その重量から逆算した球(気泡)の体積を算出し、その直径を求めてみます。
う〜ん・・・思ってたより案外気泡が大きいですね〜。それと材料の密度を純鉛で計算してますので、実際の 気泡の直径は、もう少し大きくなると思います。 とは言え、ペレットに付着する鉛のカス程度でもグルーピングが悪化するのに、(正しい方法のバレルクリーニングが大事) そんな気泡が存在すれば、もっと酷いグルーピングになる可能性もあると思うんですが、豆鉄砲の経験ではそう言った グルーピングになったコトは無いんですよね〜。 しかし実際には重量誤差はある訳でして、ならば他の部分でペレットの重量誤差の原因を考えてみます。 と、ココでふと気付いたんですが、上記表の場合、ある重量を基準にペレットの重量がマイナス側になっている 場合は気泡で説明が付きますが、重量がプラス側になった場合、気泡では説明がつかなくなるんですよね〜(汗) と言う訳で、ナニか重量を増加出来そうな部分や要因を考えないと・・・。 てな訳で、豆鉄砲の手元にあるFX16gr弾を仔細に観察すると、スカートの先端が0.5mm程度の幅の平面に なっています。 ならば、直径5.5mm、幅0.5mmのリングを基準にした場合、重量誤差があるなら、その厚みは どの程度になるか計算してみます。 あわせて、ペレットの表面積を基準に、重量誤差がある場合どの程度の厚みになるかも計算してます。 ただペレットの表面積は、正確に計算しようと思うとpart.44で少し触れましたが、ペレットの形を回転体にして 表示出来る方程式を求める必要がありますし、そこから更に積分計算が必要になるので、今回は表面積を、 直径5.5mm、長さ8mmの単純な円筒形モデルとして計算してみました。
今度は思ってたよりも小さい感じですね〜。しっかし0.1gr単位の重量誤差ってグラム換算するとホント小さな値ですよね〜。 ペレットの製造方法 こうなると、本当に重量誤差の原因になるような気泡がペレットには存在するのか?と言う疑問が沸いて来ます。 実を言うと、豆鉄砲がエアライフルを始めた頃のペレット製造のイメージと言うのは、屋台で「たこ焼き」を 焼くような感じだと思ってたんです。 イメージとして、東欧の(ペレット工場は東欧にあると聞いたので)オッちゃんかオバちゃんのどちらかは分かり ませんが、(雰囲気は浦沢直樹の描く東欧系キャラクター)その方々が、たこ焼きを焼く要領で、穴の開いた鋳型の 前に立って、ポットに入った溶けた鉛を型にジャ〜と流し込み、後はたこ焼きを焼く要領でペレットを製造する ような感じでして、まぁ要するに鋳造でペレットを製造していると思ってた訳です。 そう言った鋳造でペレットを作るなら気泡も入るかな〜?と思ってたんですよ、実際にサボットの弾を鋳造されて いる方のサイトを見ると、型が温まってない時に鉛を注ぐと、弾に気泡が入ってたりして、そのイメージも出来る かと思います。 と言う訳で、「それじゃあペレットはどんな風に作っているの?」と調べてみると、コレが全然情報が無いんですよね〜、 それでなんとかメーカーのHPに到達しても、せいぜい工場の風景の一部が写真にあるだけで、製造工程とかを写した 写真とか説明なんて無いんですよね。 しかしある時、とある方から実に興味深い話を聞きまして、その内容はと言いますと、その方、かつてエアーで 競技射撃をしていたそうなんです。 それでその時、某有名メーカーのペレットなんですが、何缶かに一発ぐらいの割合で、BB弾(丸弾)が入っていた そうなんです。(買っていたのは当然平頭弾です) それでその方が言うには、恐らく真っ当な方法で作られたペレットと言うのは、プレスで作っているであろうと 言う話なんです。 (実はこの前段階で、「単に混入しただけじゃないの?」と言う疑問があった訳ですが、冷静に考えて混入する ペースやパターンや、工場での製造の仕組みを考えると、ソレは違うだろうと言う結論になりました。) それで作り方も、鉛のインゴットを圧延して棒状or円筒形に整形して、その後BB弾を作り、更にソレをプレスして 弾を作るのではないか?と言う話なんです。 確かに、こう言う方法ならインゴットの中に気泡があっても消滅してしまうでしょうし、製造過程において気泡が 生成されるコトはまず無いと思います。 それで型についても、豆鉄砲は一回型をガシャポンとやれば、製品(弾)が一個づつ出てくるような感じかな〜 と思ったんですが、仕事でこう言った型を扱う方に言わせると、そんな眠たい方法じゃなくって、恐らく、一回型を ガシャポンとすれば、一度に製品(弾)が何個も作れる型を使っているだろうと言う話なんです。 (要するに、たこ焼きの鉄板と同じ方式ですね) そしてこの後がもっと大事な話になりまして、豆鉄砲もその方も同じ認識だったのですが、恐らく有名なペレットは 製造後に重量検査をして、製品の重量誤差をコントロールしているだろうと言う話なんです。 と言うのも、過去に何人かの方が、有名ドコロの弾を実際に計測されて、その分布を公表していたと思うんですが、 その分布を見ると、明らかに重量の頭と尻尾(重量の上と下と言う意味です)が無い感じなんです。 (まぁ実際のトコロはサンプル数100ぐらいで調べれば判明すると思います) それで実際の話、製品の重量を一個づつ計測して製造ラインに流せるか?と言えば、現在の技術ならコスト的にも、 十分に可能だと豆鉄砲は思います。(とは言え、実際にはサンプリングでだと思いますが・・・) と言う訳で、現在販売されている普通のペレットであれば、ペレット内に気泡が存在する可能性は極めて低く、 ましてやそのへんで売られてる安物の秤を使ってそれを判別するのは、全く無駄な、単なる自己満足の世界だと 思います。 ペレットの鮮度 さて、ペレット内の気泡についてはコレで豆鉄砲の結論は終わりになるのですが、実はペレットにまつわる もう一つの噂、「ペレットの鮮度」についても考えてみたいと思います。 一応世間的には、「新鮮な弾の方が良く当たる」と言う話があります。 確かにペレットは買ってスグと言うのは白銀色に光ってキレイですが、しばらくすると、グレーではなく、ねずみ色と 言うに相応しい色に変わります。 それで実際に撃ってみると、なんとなく色のキレイなペレットの方が良く当たる感じがするんですよね〜。 それでこの色の変化なんですが、世間的にはペレットの酸化だと言われています。 確かにそんな話を聞けば「ナルホド〜、ペレットの酸化か〜」と思うんですが、実は少し前に、数年前に買ってそのまま その存在を忘れ去られたペレットの在庫が見つかりまして(約3年)、まぁ数年経過しているし、ねずみ色の鮮度が落ちた 弾になっているだろうな〜と思ってソレを開けたら、なんとペレットは買った時と同様に白銀色に光っていました。 ここで密閉されてたからだと思う方も居るかもしれませんが、ペレットのプラやブリキの容器程度では酸化の原因となる 酸素なんて幾らでも透過しますので酸化が起きてない訳が無いんです。 と言うコトはですよ、ペレットがねずみ色になるのは酸化の影響じゃない可能性がある訳です。 そこで、ねずみ色に変色してしまったペレットを仔細に観察しますと、スカート内部と言うのは結構、白銀色に光っている んですよね〜。もしペレットが酸化するならどの場所も均等に酸化してねずみ色になるハズですが、ソレが起きていない・・・? つまりペレットの変色は酸化じゃない可能性がある訳です。 特にフィルムケースなどにペレットを入れて、中でペレットがジャラジャラ動く状態にしたペレット程、その変色が進む 傾向があると思います。 では、ペレットの変色の原因は何なのか?豆鉄砲の導き出した結論は、ずばりペレット表面の磨耗です。 つまり、ペレットの鮮度と命中精度の関係なんですが、コレはペレットの酸化では無く、ペレットの表面が磨耗して、 ペレットの重量バランスが悪化した結果である可能性が非常に高いと思っている訳です。 実際に計算してみると、0.1gr単位でペレット表面を磨耗させるならほんの僅かなモノですし、鮮度の落ちたペレット程、 命中精度が悪いと言うのも、時間の経過によってペレット表面の磨耗が進行し、重量バランスが悪化したと考えると納得 出来るかと思います。 とは言え、だからと言って豆鉄砲はペレットを一発づつスポンジシートなどに入れて運搬しようなんて考えません。 実際に命中精度に関しては「なんとなく」のレベルですし、本当に命中精度が悪くなるなら、猟であれば獲物に 接近すればいいだけの話ですし、実際に、フィルムケースに入れたまま最低2年は経過した弾で獲物をゲットして いますから問題ありません。 それと射撃大会であれば、弾を交換すればイイだけの話で、そもそもそんな瑣末な要因で勝てるほど甘い世界じゃ ありません(笑) ここまでのまとめ 実は豆鉄砲もエアライフルを始めた頃と言うのは、こう言ったペレットの重量誤差の選別などが大事と思っていました。 知人の一人などは、ペレットを工業試験場に依頼して、重量誤差の分布や、X線検査、果てはペレットを標本固定した後、 切片にして気泡の分布状態を調べようともしていました。 まぁ、結局は色々あって実行しなかったんで、今でこそ笑い話ですが、当時は結構真剣でした。(笑) そして、その当時のお笑いテクノロジーの一つが、ペレットの鉛筆の粉まぶしです。(part.11参照) とは言え、なんでこんなコトをしようとしたのかですが、理由は簡単で、単に情報に振り回されたからです。 要するに、古い情報に基づいて書かれたコトを、何の検証もせずに書かれた内容を信じてしまった結果です。 ペレットだって工業製品ですから、年々製造技術は向上しているハズなのに、それを理解しようとせずに、更新されるコトの無い 古い情報に基づいて書かれた内容をそのまま信じてしまったからなんです。 今後も恐らくペレットの重量選別をされる方が出てくるでしょうが、豆鉄砲としては、そんな手間ヒマをかけないと当たらない ペレットを苦労して使用するより、「お買い得・ドコでも入手可・精度が高い」と三拍子揃って、無選別でも良く当たるFX16grを 使う方が色々な意味でラクだと思いますがどうでしょうか?(笑) |