思い込みと現実の狭間3
実は、あるトコロから豆鉄砲の耳にちょっと面白い話が入ってきまして、どうやら以前に書いた、
「怪しい伝説」とか「思い込みと現実の狭間」とかの内容について、その真偽が噂になっている
そうなんです。
しかも、そのスタンスが、「あんなのなんの根拠もないウソだ!ウソに決まってる!」とかじゃなくって
「アレってホントなの・・・?」みたいな疑問系がメインみたいなんですよね〜。
豆鉄砲としては、コレは実にイイ傾向だと思ってまして、情報を鵜呑みにせず自分自身の頭で考える
一助になれたコトを実に嬉しく思っています。←誰だよ、疫病神の囁きとか言うヤツは(笑)
 
と言う訳で、いつもでしたらネタ2本分ぐらいで「思い込みと現実の狭間」をやるんですが、今回は
「水平器」だけでの1本でお送りします。
 
水平器
射撃において、銃の傾きがグルーピングに影響を与えると言う話は昔からありまして、
実際に図とかを提示して説明しているケースも多々あります。
そして、その対策として、銃に水平器を取り付けることが推奨されていたりもします。
そんな訳で、豆鉄砲もそれを信じ込んで、かなり初期の頃から水平器を購入して使用していたんですが、
実を言うと喜んで使っていたのは本当に初期の頃だけで、後は単なるアクセサリー扱いだったんです。
と言うのも、実際に使った方は解ると思うんですが、キチンと水平を出してスコープを取り付けると、
銃を構えた時、なんとなく傾いていると解るんですよね〜。
まぁ唯一の効能は、水平器を付けていると、周りの人から『出来る人』みたいに勘違いされて、ハッタリ
が利く程度ですかね〜。
それなので、豆鉄砲としては『エリマキトカゲ的アイテム』と認識しておりました(笑)。
 
しかし、それでも『もしかしたら・・・』と思って、自分が水平と思う状態に銃を構えた場合に、実際の
トコロはどうなのかと水平器で確認すると、ほぼ水平が出ているんですよね(汗)
それで色々試してみて解るコトは、水平器があろうが無かろうか、射撃結果は大して変わらないと言うコト
なんです。
 
それで、もっと言うと、水平器を持っている人同士で「どんな按配ですか?」と聞けば、帰ってくる答えも
豆鉄砲の感じたコトと殆ど同じなんです。
と、まぁここで話が終われば、水平器を買ってしまった同士で、
「ミーハー根性で水平器買ったけど、あまり役に立たなかったね〜、ハッハッハッ」
で済むんですが、part49 のコサインインジゲータの項目を書いていた時に少し考えが変わりまして・・・。
と言うのも、実はあの項目、豆鉄砲も実際に手を動かして計算をするまでは、あれほど差が無いコトとは
思っていなかったんです。
と言うのも、ネットや本などは、「撃ち上げ、撃ち下ろし」における射撃距離の変化について非常に重要視
されていたからなんです。
 
ところが実際の猟場を想定して計算をしてみたら、誤差の範囲と言うか結果はご存知の通りです。
と言うコトはですよ、一部の業者や自称ベテランみたいな人が喧伝する
「銃の傾きがグルーピングに及ぼす影響」
なんて言うのも、だれもがその説明図とか見て、「お〜確かにそうだ、水平器を買わなきゃ」と思っている
のに、実際に計算してみたら、ほとんど意味が無い可能性もある訳ですよ。
と言う訳で、銃の傾きによって、どの程度グルーピングが変化するかを検証してみます。
 
ステップ1



スコープの軸線とバレルの軸線は図のように交わります。この交わる距離を実測で求めようと思っても、
豆鉄砲の手持ち機材では不可能なんで、ここはひとつ弾道計算ソフトの助けを借りてみるコトにします。
と言う訳で、「Chairgun Pro」と言う弾道計算ソフトを使って必要項目を入力すると、豆鉄砲の銃の場合、
約15mでそれぞれの軸線が交わるコトが判明したので、今回はコレを採用します。
 
ステップ2



この図は銃を後方から見てると思ってください、青い○がスコープで、赤い○が銃身です。
そしてスコープと銃身の距離なんですが、コレも豆鉄砲の銃を基準には5cmとしておきます。
多分この距離辺りが、現実的に入手可能なマウントの最大サイズだと思います。
そしてここでは便宜上、1m辺り1mm、銃が傾いた場合を計算してみます。
この傾いた時の角度aと、その移動量aを求める方法ですが、角度aの求め方は、まず角度aのtanθを求める為、
1(1mm)÷1000(1000mm)=0.001 と計算します。
すると、角度aのtanθ出ますので、あとはアークタンジェントの式を用いれば角度aを求めるコトが出来ます。
※このステップのアークテンジェトで角度を求める計算ですが、省略しても問題ありません。
 必要なのはtanθの値です。
そして、このtanθの0.001を用いれば、移動量a=0.001×5cm=0.005cm=0.05mmと求められます。
 
 ※実はこの移動量aを求める計算方法ですが、厳密に考えると間違いがあります。
  ただし、普通に銃を構えるレベルなら、完全に誤差の範囲に収まりますし、着弾誤差の結果に、
  ほとんど影響を与えないので、このままにしておきます。
  正解が解った人は、ソレをネットに提示して豆鉄砲のコトを叩けばイイと思います。
  と言う訳で、豆鉄砲のコトを叩きたい人はチャンスです。
  自分で手を動かして図を描き、高校の数Uの教科書片手に関数電卓を叩くか、Excelに計算式を入れて
  豆鉄砲のペテンを暴いて下さい(笑)
 
ステップ3



この図は銃を真上から見ていると思って下さい。
銃が垂直になっている場合、スコープとバレルは一直線になるので、本来バレルの赤い線は見えないはず
なのですが、図では銃が1mに対して1mmだけ傾いているので、バレルの赤い線が見えています。
そして黒い太線の長さが、ステップ2で求めた移動量aです。そしてスコープの軸線とバレルの軸線は15mで
交わっているので、二つの辺の長さから、角度bのtanθが計算出来ますので計算式は、
0.05(5cm)÷15000(15m)=0.0000033333… となります。
そして50mにおける移動量を計算するんですが、この時の注意は距離を単純に50mにするのではなく、
スコープとバレルの軸線が交わる距離を引く必要があるので、 
50m(標的までの距離)-15m(スコープとバレルの軸線が交わる距離)=35m
とするコトです。単純に50mにしてしまうと、65mでの移動量になってしまいます。
移動量b=0.000003333×35m=0.00011667m=0.11667mm
と言う訳で、1m辺り1mm銃が傾いた場合、50mの射撃距離では、計算上0.11667mm≒0.1mm程度の着弾のズレが
あると言うコトになります。
 
しっかし、1m辺り1mmの傾きなんてフツーの人が感じられるのかな・・・?オイラには解らない気が・・・(笑)
とまぁこんな感じで計算方法が解ったと思いますので、後は毎度お得意のexcel様に計算式を放り込んで計算を
してみます。
 


1m辺りの
傾き(mm)
角度a(°)
移動量a
(mm)
移動角度b
(°)
各距離における銃の傾きとその着弾のズレの関係(mm)
50m
60m
70m
80m
90m
100m
1.00
0.057
0.005
0.000191
0.117
0.150
0.183
0.217
0.250
0.283
2.00
0.115
0.010
0.000382
0.233
0.300
0.367
0.433
0.500
0.567
3.00
0.172
0.015
0.000573
0.350
0.450
0.550
0.650
0.750
0.850
4.00
0.229
0.020
0.000764
0.467
0.600
0.733
0.867
1.000
1.133
5.00
0.286
0.025
0.000955
0.583
0.750
0.917
1.083
1.250
1.417
6.00
0.344
0.030
0.001146
0.700
0.900
1.100
1.300
1.500
1.700
7.00
0.401
0.035
0.001337
0.817
1.050
1.283
1.517
1.750
1.983
8.00
0.458
0.040
0.001528
0.933
1.200
1.467
1.733
2.000
2.267
9.00
0.516
0.045
0.001719
1.050
1.350
1.650
1.950
2.250
2.550
10.00
0.573
0.050
0.001910
1.167
1.500
1.833
2.167
2.500
2.833
20.00
1.146
0.100
0.003820
2.333
3.000
3.667
4.333
5.000
5.667
30.00
1.718
0.150
0.005730
3.500
4.500
5.500
6.500
7.500
8.500

 ※この表は豆鉄砲の持つ銃の条件での計算結果です。ただし、他の銃でも結果はあまり変わりません。
 
コレを見ると、明らかに欠陥住宅レベルになりそうな、1m辺り1cmの傾きがあっても、完全に許容範囲に入る
ような数値です。
だって明らかに平均的グルーピングの範囲ですからね(笑)
 
と言う訳で、銃の傾きが射撃に及ぼす影響ですが、どうやら世間で宣伝されるほど影響があるものではないよう
です。と言うか、スコープを銃にセットする時、キッチリと水平を出して取り付ければ、後はスコープを覗いた
ときの違和感を基準に修正をしてあげれば実猟上は問題ないと思います。
 
ここまでのまとめ

part.49 のコサインインジゲータの時もそうですが、結局全ての始まりは、誰かが思い込みで自己に都合の
良い話を、全く検証しないままに垂れ流したものが始まりでした。
そしてそれを誰一人として疑問を持たぬまま、中途半端な知識に基づき、検証すらしないままに信じ込んで
しまったと言うのが実情でした。(豆鉄砲もその中の一人でした、ゴメンナサイ)
 
とは言え、その最初の誰かが「銃の傾きが着弾位置に及ぼす影響」の真相の部分を知っていて隠蔽していたか
と言うと、恐らくそれは違うであろうと豆鉄砲は思っています。
真相は、その最初の人が、恐らく海外のサイトに出ていた情報を、単純にそのままコピーして日本に持ち込み
広げただけの話であり、その誰かには、それを検証する気力も知識も能力も無かったのであろうと言うコトです。
(もしその能力があれば、今回のネタは成立していなかったでしょう)
そして海外のサイトにおいて、このオリジナルの情報を提供した人は、恐らくライフル射撃の、それも遠距離に
おける銃の傾きが着弾にどう影響を与えるのかについて説明されていた内容を、射程の短いエアライフルに何の
考えも無く、単にそのまま当てはめた間抜けでしょう。
 
つまり、今現在、ネットに展開される各種理論の多くは、所詮その程度の信頼度のモノと言うコトなんです。
海外だから情報が進んでいるとか、権威がある人が言ってたから正しいなんて、なんの根拠もありません。
 
以前にも豆鉄砲が提唱していますが、エアライフルの最大でも100m程度の射程では「距離・風・充填圧」だけを
注意すれば、あとは変な小難しい理屈は無視してokなんです。
そしてプレチャージのエアライフルと言うのは、何の改造や改善も必要では無く、基本的にノーマルの状態で
「距離・風・充填圧」だけを注意すれば、後は非常に扱いやすい、実に初心者向けの銃なんです。
 
とは言え、今後も、「理解出来ないコトを、自分の頭のレベルに合わせて都合の良いように理解し拡散する」と言う方は
一定数存在し続けるでしょうから、豆鉄砲としては、ネタに困らなくていいかな〜、と思ってたりもしてます(笑)