ジビエに纏わるエトセトラ
 
豆鉄砲がハンティングを始めた頃は、ネット上に現在ほど大量のジビエの情報があった訳ではなく、その断片を
知るのがせいぜいでした。
しかし現在は、ネットを彷徨えばジビエ料理のレシピが簡単に入手可能になり、ハンティングに関する情報も
大量に入手可能になりました。
 
しかしハンティングで獲った獲物から、ジビエ料理の素材に移行する過程に関しての情報って物凄く少ないんです。
と言う訳で、ジビエに関しての、獲物から素材へのミッシングリンクを解き明かす知識の断片です。
 
血抜き 〜血液の特性〜
ハンターの方々や一般の方々でも『血抜き』について語る人は多いですが、その実態を正しく捉えてる人は物凄く
少ないです。と言うのも「血抜き、血抜き、臭みの無い肉には血抜き〜」と言う割に、血液の基本特性すら知らない
人がほとんどと言うか、皆無なんです(笑)
つまり血液の基本特性が分ってないのに、正しい『血抜き』なんて出来る訳がないんです。
だって良く考えてみて下さい、体から一定量の血液が抜けたら生物は死んでしまう訳なんで、生物はあらゆる
手段を使って、出来る限り血液を失わないような体の構造や仕組みを持っているんです。
どうです?言ってるコト案外マトモで核心突いてるでしょ?(笑)
 
と言う訳で、血液の基本特性なんですが、簡単に言うと基本的に『何もしなければ固まる』特性を持ってます。
イマイチ普通の人には意味不明でしょうから、もう少し詳しく説明すると、血液と言うのは元々固まる性質の
モノでして、普段は血管に血液が固まらないようにする仕組みが存在して、血液を固まらないようにして
流していると言うコトです。
 
まぁ簡単に言うと、血液をバターやラードのような冷えたら固まる物質だとすると、普段血管から熱を加え暖め
続けるコトによって、固まる性質の血液を無理矢理溶かして血管内を流していると言うコトで、生体反応が停止して、
血管に熱が加わるのが止まれば冷えて固まると言うコトです。
 
※この血液の凝固に関するコトに関しては、正直言って我々シロウトが分かり易く簡単に理解するコトは
  事実上不可能でして、全てを理解する為には、生理学の教科書を熟読するしかありませんので、興味
  がある方はご自身で勉強して下さい。
  また、よくあるスッポンの生き血が手順を間違えると固まるのも同じ原理のハズです。
 
なので、死んだ獲物を持ち帰って『血抜き』と称して首辺りを切っても血が出ないのは当然なんです。
それではどうすれば『血抜き』を上手に出来るか?
こう言うモノはプロのしているコトを見てナニをどうしてるか観察するのが近道なんで、解体のプロの仕事を
手本にしてみましょう。
 
家畜・家禽の血抜き 〜合理的な手順〜
動画サイトなどで、家畜や家禽の解体シーンを探すコトが出来ると思います。
そこで牛の屠殺手順を見てみますと、大体が、まず牛を連れてきまして頭に屠殺銃と呼ばれるモノを打ち込み、
その後に首の血管を切って放血させ、最後に後ろ足にチェーンを掛けて吊り上げて次の工程に移ります。
そしてエアライフルハンターに関係しそうな獲物に近いニワトリですが、コレも首の一部を切って放血をさせて
います。
 
実は豆鉄砲も色々調べるまで勘違いしていたのですが、豆鉄砲はてっきり、頭に屠殺銃を打ち込んだ段階で
脳が破壊されて死亡するものだと思っていましたら、「実は失神させているだけ」だそうでして、かつては
棍棒などで殴打して失神させていたそうで、物凄く危険な作業だったそうです。
 
※確かに、中東とかで新年に食べる羊や牛を解体するシーンを見ると、羊は割りと簡単な拘束で
  ホイホイと解体してますが、牛に関しては足を縛って身動き出来ないようにして解体してるので、
  相当に危険な作業なんでしょう。
 
それでなんで失神させるだけなのかと言うと、コレが『血抜き』をする上で物凄く大事なコトだったんです。
 
先ほど述べましたように、血液と言うのは基本的に固まる性質を持っているので、血抜きをする上では、
如何に素早く放血を行うかが鍵になります。
その時に一番合理的な方法なのが、心臓のポンプ作用を使って速やかに体外に血液を放出させるコトなんです。
「んなモン知ってわ!」と言う方も居るでしょうが、ここに『失神させてるだけ』の意味が関わってきます。
実は心臓の拍動について調べると、そのリズムを心臓自身が刻んでいるコトが分ります(洞房結節)
そうなると「だったらギロチンみたいに首を落としたら?」となるんですが、もう少し詳しく調べると、
脳の一部(小脳)も心臓の拍動させるバックアップ機能を持っているコトが分ります。
 
つまりどう言うコトかと言うと、ポンプである心臓に一番近く、そして太い血管が通ってる首の一部を切断
するコトによって、大量の血液を速やかに放出させます。そうなると体の方は血圧の低下を感知するので、
生き残るために体の末端への血液の供給を止め(血管を収縮させる)、脳と心臓に血液を送るコトを最優先
させます。
 
当然のコトながら太い血管が切断されているので、どれだけ末端へ流れる血液を止めて、脳と心臓に回わそう
としても血液は失い続けるので、最終的に失血死し、血抜きが出来た完璧な肉となります。
 
恐らくこの時に心臓と脳を繋ぐ脊髄を損傷させると、この作用が起こらないか、大幅に作用が低下する
のでしょう。
 
そして、牛を連れてくる前にも品質の高い肉を作る為の工夫がありまして、例えば解体を待つ間、壁や柵、
他の動物にぶつかると、打ち身を起こして当然の生体反応として、肉に血液やリンパ液が集まって品質が
低下してしまうので、解体されるまでの間、動物を安全に移動させる装置で工夫をしています。
 
この動物を安全に移動させる装置、人間様にも随分と使用されていまして、一番分りやすいのが、某ネズミの
国とかで行列を整理するのに使っている方法です。(比較的短い距離での折り返し)
皆さんも記憶にありませんか?昔に比べて行列に並んでも押し合い圧し合いが無くなったコトに?
それでこの行列のコントロール技術ですが、人間と家畜のどちらが先かと言うと、家畜が先です(笑)
 
豆鉄砲がかつてpart.56『ヘッドショットの獲物は品質の高い獲物にはなり得ません。』としたのはこう
言った理由があるからでして、獲物の血抜きを考えると、ヘッドショットと言う方法が極めて非合理的でして、
どちらかと言うと、自己顕示欲に満ちた方が自慢するのには良いのでしょうが、ちゃんと道理を考えて獲物の
品質を語る方なら、少なくとも品質の高い獲物だと自慢は出来ないと思います。
 
となると、どのようにするのが一番品質の高いジビエが確保出来るか?ですが、ベストは首を通る血管だけを
カットする方法です。しかしエアライフルで狙う以上、そんな血管だけをカットするような器用な撃ち方は
出来る訳がなく、当然脊髄を傷つけると思います。
そうなると次は順当に行って羽の付け根周りを狙う方法ですが、これも血管だけをカット出来れば良いですが、
場合によっては心臓そのモノを破壊してしまう可能性もある訳です。
 
当然のコトながらその他の部位では話しになりません。エアライフルではバイタルを狙うコトが重要な訳ですが、
一般的なバイタルエリアの認識は横隔膜の上ですが、パワーの弱いエアライフルでは、バイタルエリアの設定
(下限)を横隔膜ではなく、心臓の中心辺りに設定しないと、色々な意味で確実な捕獲は難しいと思います。
 
そこで豆鉄砲が考える、品質の高い獲物がゲット出来る都合の良い射撃パターンです。
 
1位 ネックショットで脊髄に傷が入らない
2位 羽の根元狙いで、心臓と神経を破壊しない
3位 ヘッドショット=ネックショット(脊髄破壊)=羽の根元(心臓破壊)
 
前提条件として、あくまで全て一発で仕留めるのが条件で、射撃後に獲物が一発で行動不能になった場合は、
脊髄に傷が入った証拠なので獲物の品質を考えるとあまりベストとは言えないと思います。
 
と言う訳で、ヘッドショット=オレ様の射撃テク最高=獲物の品質も最高 ではなく
 
ヘッドショット≒オレ様の射撃テク最高≠獲物の品質も最高
 
なので、意味の無いヘッドショット信仰はそろそろ卒業しましょう(笑)
 
合理的で最も手堅い狙点
鳥を観察すると、首を動かす度に胴体と首の
境目が判明します。弾が抜けるラインは人間
で言うと、脇の下を抜けるラインが色々な意味
で便利なので、まずはポイントを首から下約1cm
辺りの赤線を目安にして、心臓から出る血管を
破壊する、弾が体の中心を抜けれるような部分を
イメージしで狙点を設定して下さい。
当然、「血管だけ狙えるの?」と言う話になり
ますが、ここで色気を出してネック狙いにしても
難しいだけなので、外しても平気でいられるよう
になってからネック狙いに変更しましょう。
ハッキリ言いますと、このライン(エリア)からズレた
ボディ側の位置に着弾しても逃げられる可能性が
高いです。

熟成での衛生管理
〜捕獲後の温度管理〜
獲った獲物には当然体温があって暖かい訳でして、その体温をどのように処理するかが、その後のジビエの
品質に関わってきます。
とは言え、鳥の場合は体の大きさも小さいので、体の大きな四足と比べるとそれほど放熱に気を使わなくても
問題は無いと思います。(それよりも熟成時の内臓の処理状態などの方が品質への影響が大きいです)
それと腸内ガスの発生などへの懸念は、時間の経過と共に体温は低下していくので、腸内細菌の活動も低下して
行きます。細菌にはそれぞれ好適な温度があるので、獲物が生きていた時の腸内細菌の活動レベルが獲物の死後
も同じレベルで継続はされないので、不用意な腸抜きは必要ありません。
 
ただし四足になりますと、捕獲前に逃げる為に激しい運動をして体温が上昇しているケースもあるでしょうし、
体も大きいので体温が維持されやすいので、獲物の品質に拘るのであれば捕獲場所への考慮も必要でしょうが、
自家消費のレベルでしたら、その辺りは現実との相談になります。
 
〜フザンタージュ〜
内臓の処理に関して、フザンタージュと言うモノがあるんですが、豆鉄砲の最終結論としてアレは落語で言う
トコロの「酢豆腐」みたいなモノではないのか?となりました。 だってねぇ、やっぱクサイですよアレは(笑)
 
それでここからは想像の範囲ですけど、その昔、電気も冷蔵庫も無い時代、獲物を獲ったら痛みやすい腸だけ
抜いて、後は涼しい納屋とかに吊るして熟成という名目の保管をしていたと思うんです。
ここで本来なら内臓の洗浄なんですが、アチラは日本と違って水の事情が悪かったハズですし、衛生概念に
関しても道端にウ○コをバラ撒いていたような連中ですから、その臭いに比べれば内臓から漂う臭いなんて、
子供騙しのレベルだったのでしょう(笑)
あとは実際には、本音では「クサイ」と思っていたのに、周りが
「うまいウマイ、やっぱりジビエはコレだね(笑)」
とかやっていたんで、なんとなくの同調圧力によってフザンタージュが持て囃されたのでは?と思ってます。
 
それが証拠に、家畜・家禽のドレを見ても内臓の風味を肉に移してなんてモンはありません。
と言う訳で、食通ぶって「ジビエはフザンタージュがね・・・」とか言っている連中も、本音ではクサイと
思ってるのではないでしょうか?(笑)
 
〜羽なしvs羽あり〜
獲ってきた獲物はそのままでは食べにくいので、食べる前までには羽を毟る必要があります。
また、獲物を熟成させる場合は、ここで羽を毟ってから熟成させるか、羽を付けたまま熟成させるかの
2つのパターンが選べます。
そこで、どちらの方法がより良いのかの判断ですが、衛生面から考えれば、間違いなく羽を毟ってから
の熟成です。

しかしヨーロッパなどでジビエが売られている様子を見ると「羽・毛付き」で販売されてるのが普通ですが、
アレは恐らく昔からあのような形でジビエを売っているので、伝統として続けているのではないかと豆鉄砲は
思っています。
それとジビエは種類が多いので、場合によっては羽を毟って頭と足を落としたら種類を誤魔化すことも可能
なので、衛生面を考えてより、伝統とか商慣習が優先されての結果だと思います。
 
ジビエの場合、当然野山を徘徊しているので、その羽や毛にはホコリや菌などが大量に付着しています。
その中には当然、危ない菌もいるでしょうから、食べる人の安全を考えるなら、如何にしてそのリスクを
下げるかを考える必要があります。そこで、以下が食中毒を防ぐ為に推奨されている方法です。
 
・付けない(清潔)
・増やさない(迅速、冷却、乾燥)
・殺す(加熱など)
 
このように推奨されているので、では熟成の過程において、どのようにリスクを管理するかですが、
 
・付けない(清潔)
これは単純に羽を毟るのが正解だと思います。中には羽を毟らないまま、例えばアルコール除菌スプレーなどで
殺菌すればokだと思う人もいるでしょうが、食中毒対策において、汚れに対してはまず『洗浄』なので、普通に
羽を毟って流水で洗浄してから熟成させるのが正解だと思います。
当然、羽を毟った後は乾燥に対する対策が必要なので、ジップロックなどの袋を使用すれば問題はありません。
 
・増やさない(迅速、冷却、乾燥)
これも単純に熟成の温度を下げて対応するしかありません。
part.50「獲物の品質管理」でも少し触れましたが、5℃以下で保存して出来る限り熟成終了まで、細菌が繁殖
しにくい温度を保って安全を確保しましょう。
 
・殺す(加熱など)
熟成工程では加熱などは出来ませんし、実際のジビエ料理では完全に火を通すより、ロゼ色に仕上げる方が
風味も良く美味しいので、そのような仕上げでも安全が確保出来るように、その前段階で出来る限り安全を
確保出来るような方法を採用しましょう。
 
食中毒の予防 〜熟成時の注意点〜
ジビエを確保した後は、その品質管理は自分で行うしかありません。
正しい品質管理をする為にも、菌の繁殖を予防する方法を正しく理解しましょう。
 
細菌が増殖する為の3条件
細菌が増殖する為には、『エサ・温度・水分』が必要です。
 
1.エサ
細菌が繁殖する為にはエサとなるようなモノが必要なので、通常は入念な洗浄や清掃で対応する訳ですが、
ジビエの場合はジビエそのモノがエサになるので、コレを無くす訳にはいかないので、とりあえず菌が付着
しないように、流水で洗浄した後は衛生的に取り扱うコトを心がけましょう。
 
2.温度
細菌には繁殖温度は大体が10〜60℃の間ですが、5℃を下回ると食中毒細菌の類は、ほぼ増殖出来ないんで、
熟成中などは、くれぐれも5℃を上回らないような工夫をしましょう。
 
3.水分 (水分活性)
ご存知ない方もいるとは思いますが、細菌が増殖する為には水分が必要です。
ただし食品中に含まれる水分には『結合水』と『自由水』と言うモノがありまして、結合水は文字通り
何かの物質と結び付いた水でして、この水は細菌が増殖には利用出来ません。
自由水は文字通り自由に移動出来る水でして、細菌は増殖する時にこの水を使います。
そして食品中に含まれる『結合水』と『自由水』の割合を水分活性(aw)と言いまして、塩や砂糖などを添加する
ことによって、食品中の自由水の割合を低下させ(水分活性の低下)細菌の増殖を抑える方法が塩蔵であり、
砂糖漬けです。
そしてもう一つの方法が、食品そのモノから水分を除去する方法です(干物・燻製・生ハムなど)
 
以上、この3条件のうち一つでも条件を崩されると、細菌の増殖は途端に難しくなります。
(増殖しない訳ではないので注意!)
 
我々が冷蔵庫で食品を保存するのは、この3条件のうち『温度』の条件を崩す為です。
 
加工品の衛生管理 〜砂糖(糖類)の特性 乾塩法vs湿塩法〜
これまでに料理などをしたことが無い人が、自分の獲ったジビエに関して保存食の類(ベーコンなど)
を作ろうとすると、同じようなレシピで「乾塩法vs湿塩法」では、なんとなく乾塩法の方が本格的な
感じがして、それと同時にレシピから砂糖(糖類)を抜いて作ろうとしますが、日頃、今時の食肉の
加工品を食べ慣れてる現代人にとっては、全くイメージとは異なる加工品が出来上がるので注意
して下さい(笑)
 
本格的なハムを食べると分るんですが、今まで普通にスーパーなどて売っているハムしか食べたコトの
無い人にとっては『しょっぱくてパサパサしてる』としか思えないシロモノです(笑)
 
市販品の場合、当然歩留まりとかもありますが、メーカーは食べやすさも考えて作ってますので、
自家製の加工品を作るなら、ある程度水分量を確保出来る製造方法を採用しましょう。
 
ちなみに砂糖(糖類)の効果は保水性なので、モノがシットリと仕上がりますし、湿塩法だと極度に
水分が失われる訳ではないので、それなりのモノが出来ます。
とは言え、最後は好みの問題なのでいろいろ作って試してみるのも方法だと思います。
 
塩抜きの科学 〜塩抜きの意味〜
ハムやベーコンなどの燻製を作る時に『塩抜き』と言う工程があります。
この工程、普通に考えると「行って来い」で物凄く無駄な感じがしますし、塩抜きの工程でエキスと言うか、
味が抜けるような感じがするので、豆鉄砲も最初にこの工程を知った時には、
「塩分量を調整して、塩抜きの工程が不要になるようにすればいいんじゃないの?」
と思っていましたし、今時の燻製を作る方々のレシピや作例を見ていると、考えるコトは皆同じな様で
塩抜き不要の塩分量で燻製を作っているケースが多いんですが、実は『塩抜き』の工程が意味する
モノって安全には結構重要だったんです。
 
まず味付けを目的とするのには余りにも大量の塩を使う塩蔵の意味ですが、大量の塩分を使って確実に
素材内部まで塩分を浸透させて、その脱水効果で素材の水分量を下げさせ(水分活性の低下)腐敗を防ぐ
のと同時に、大量の塩に含まれる亜硝酸塩を素材の内部まで確実に浸透させて、保存時にボツリヌス菌の
繁殖を抑制させるコトにあります。(ここで言う塩とは岩塩のコトです)
当然のコトながら、これによって素材内部に僅かに残った細菌の増殖を完全にシャットダウンすることも
出来るので、塩蔵の終わった段階では、ある意味、素材の内部は無菌状態になります。
 
※亜硝酸Naに関して、パッケージに「発色剤」とされているので「発色剤なんてケシカラン!」と、したり顔で
  騒ぐバカが一定数いますが、国の定めで亜硝酸Naは「発色剤」としての使用しか認められていません。
  じゃあ亜硝酸Naの保存料としての効果は?となるんですが、まぁ、国が定めている以上、本音と建前を
  使い分けるのが賢い大人の対応です。
  世の中に食品添加物のリスクを吹聴する人は多数いますが、その真実を知る人は限りなく少ないです。
  結局、付け焼刃の知識で偏った食品添加物のリスクを騒ぎ立てる人が多すぎるだけです。
  どうぞpart.61「今そこにある危機」を参考に、真実は自分で調べてみましょう。
 
次の塩抜き工程では素材の表面に細菌が付着する可能性がありますが、素材内部へ細菌が侵入するほどに細菌が
繁殖するまでにはある程度時間が掛かりますし、細菌が内部に侵攻しようとする頃には、塩抜き工程が終わって
次の乾燥工程に進むので、その時点で細菌の繁殖は絶望的となり安全が確保されます。
 
※但し、この工程でも素材の温度を5℃以上にしないように注意しましょう。
 
それなので、現代の食べるモノがいくらでもあって、冬を前に豚を一頭屠殺して、家族が一冬過ごす為の
保存食としてハムやベーコンを作る必要が無いのなら、塩抜き不要の塩分量で燻製を作っても大丈夫だと
思いますが、その製作過程で菌が繁殖出来ない状態を作り出せてないので、衛生概念が希薄な方や、菌の
抑制方法を知らない方だと、それなりにリスクが高いので、その辺りを勘案してお楽しみ下さい。
 
風乾の科学 〜水分の除去〜
塩抜きが終わった後は風乾の工程に進む必要があり、モノの本などでは軒に吊るすとかありますが、
ここでも安全を確保する為には、5℃を上回らないように工夫する必要があります。
となりますと、普通は冷蔵庫にでも入れるしかありませんが、そのまま冷蔵庫に入れてもカビが繁殖するだけです。
中にはアルコール除菌剤で殺菌すればokだと思う方もいるようですが、そんな効果は一瞬しか維持出来ないですし、
扉を開け閉めすれば、室内に浮遊するカビの胞子など、簡単に冷蔵庫内に侵入します。
と言う訳で、お値段は少々しますが、素直に脱水シート(ピチットなど)を使って、速やかに表面の水分を除去して、
カビが繁殖出来ないようにしましょう。更に本格的と言うか大掛かりになると、食品用のセロファンで包んで、
砂糖や水アメの中に入れて浸透圧で強制的に水分を除去する方法もあります。
 
白カビの科学 〜白カビの入手法〜
世の中には、意図的に白カビを生やした生ハムやサラミなどがあり、一定の人気を博しています。
となるとコレを手作りしたくなるのが人情でしょうが、現実はかなり難しいです。
と言うのも、まず日本では個人レベルで生ハムやサラミに使うカビを入手するのが不可能でして、
例えば語学が堪能であったり、外国のそのような工場と懇意であれば別でしょうが普通の方には縁の無い
話しなんで、諦めた方が早いです。
 
ただし中には、なんとしても作ってみたいと思うマニアな方々が一定数いる訳でして、そう言った方々が
代用品として着目したのがチーズのカビです。
そこでマニアな方々は、白カビのチーズからカビをこそげ落とし、水に溶かして噴霧したり、チーズの
カビの生えた表面を剥いで貼り付けたりしたようです。
但しこの方法、微生物の純粋培養とかの知識とか経験が無ければ、ほぼ100%コンタミして失敗しますので、
万人に勧められる方法じゃありません。
 
※天然酵母(?)でパンを作られている方々の掲示板を見てると、購入当初と臭いや味が変ったと言う
  報告があって、その度にバカな連中が『天然酵母は家によって、匂いとかの個性が変ってきますよ』
  思わず、頭に虫が湧いてんじゃないかと思うような発言をしてますが、んなモンは単なるコンタミで
  本人は天然酵母(?)を育ててるつもりでしょうが、実際は全く別のモンを育ててるだけです。
  命が大事なら、素人の作った天然酵母(?)パンは間違いなく地雷なので注意しましょう。
 
  また家庭で手作りしやすい味噌や納豆ですが、これらは素人がある程度アバウトな作り方をしても
  ほぼ安全が確保される、世界的に見ても珍しい食品の類です。
 
また培養するカビの候補ですが、国産チーズですと、出荷前に熱処理して熟成を止めてしまうので、生きた
カビのチーズが欲しかったら、おフランス産のAOCとかの表示がされたチーズを使えばいいと思います。
 
※豆鉄砲は、いつ買っても毎回熟成状態が同じな国産チーズの方が好きです(○治の○勝カマンベール最高!)
  フランス産?あんな毎回買う度に熟成状態にバラつきのあるようなモンは面倒でキライです(笑)
 
それと自然に発生するカビを利用しようとするのは、大変危険なんで絶対に避けて下さい。
予め意図したカビを意図的に発生させるのは安全が確保されているので安心ですが、自然任せでカビを
発生させた場合、意図しないカビが発生していて中毒などの症状に陥る可能性があるので、くれぐれも
無茶はしないで下さい。
 
正直、手作りでそんなモンを作るより、買った方が安全でウマイです(笑)
 
もしも手作りのカビが生えた生ハムやサラミを出されたら、カビの入手方法と繁殖方法を聞いて下さい。
自然発生させたとか、ノウハウだから秘密とかなら限りなく危険なシロモノなんで、絶対に食べるのは
避けるべきです。
 
手作りだから安心、天然だから安全なんてモンは単なる幻想です(マジですよ)
 
窒息カモに関する見解
血抜き同様、カモにもよく言われるコトがありまして、ソレが窒息カモに関するコトです。
それで世の中で語られる窒息カモについての話が
「カモはね、本場(フランス)では窒息させて『血』の味を楽しむんだよ」
みたいなコトが語られてるので、ハンティングを始めた頃は、なんとなく『血の味』を楽しめるように
するのが良いのかな〜?と考えていたのですが、現在はジビエに関しては『血の味』を楽しむ為の余計な
細工をしなくても、ハンターが獲る獲物には十分に『血の味(野生味)』がしていると思います。
 
ではなぜ窒息カモが珍重されているか?なのですが、アレは家禽のカモの味を少しでも天然のカモに近づける
為の、手間と言うか細工ではないかと思っています。
 
と言うのも、以前地方にある友人の家に遊びに行った時、近所にあるソバ屋さんに入って「鴨南蛮」を
食べる機会があったのですが、そのお店、使っているカモがなんでもバルバリー種の高級カモを使っている
とかで、お店の方が自信をもって勧めていたので「じゃあ話しのタネに(笑)」と思って注文してみました。
 
一応友人には過去に何度か天然アオクビを送っていて、そのダシの味に虜になっていたので、かなり期待
していたようですが(値段もソレなりでしたので)食べてみて、そのアッサリした感じのカモ肉の味に
落胆していました(笑)
 
豆鉄砲も食べてみて、ダシは当然カモ出汁じゃなくって、普通のソバ屋さんの出汁なのは想定内でしたが、
メインであるカモ肉に関しては、お互い味のイメージが天然アオクビ様だったので、そのクセの無さと
言うか、天然アオクビに比べて、味の物足りなさに思わず顔を見合わせました(笑)
 
ただお互いの感想として、天然アオクビに比べれば物足りないですが、食材としては非常に美味しかった
コトは間違いないですし、こちらの方が遥かに一般受けすると思います。
 
それと実際の窒息カモと言うのは、どうやらかなり特殊なケースのようで、ごく一部の地域のごく一部の
カモにだけ施される加工のようなので、ハンターとしては、普通に品質の高い獲物を確保する方法を実行
すれば良いと思います。
 
カモの序列
狩猟鳥獣の中で、カモ類が最も種類が多い訳ですが、その味の優劣に関して色々な意見があります。
豆鉄砲としは、やはり王者はアオクビだと思っていますが、中には別の意見もありまして、例えば九州に
住んでいた方などでは、アオクビだけでなく、ヒドリガモも同じようにウマイよ!と言う意見もありましたし、
別の料理本ではキンクロハジロ(だったような気がします)が最高とされて、ネットでは結構話題になりました。
 
こうなりますと当然のコトながら「どれでも一緒、大差無い」と言う意見も出てきますが、マグロで考え
てみたら答えは簡単でして、味の序列は当然存在します。
 
例えば築地市場のマグロのセリ場にいる人に「マグロってドレも味なんて一緒でしょ?」と聞けば、
「ムリしてマグロ食べなくてもいいよ(呆)」と相手にもされないでしょう(笑)
 
と言う訳で、昔どこかで見てメモしてあったカモの取引相場ですが
 
・マガモ=通常オスとメスの二羽の番で取引され「二羽物」と呼ばれる
・オナガカモ=三羽でマガモの番と同じモノとして取引され「三羽物」と呼ばれる
・ヒドリガモ=四羽でマガモの番と同じモノとして取引され「四羽物」と呼ばれる
 
と、このようになっていたそうなので、間違いなく獲物には味の序列が存在すると考えて良いと思います。
 
真空パックの実態
家庭用に手軽に使える真空パックの機械がリーズナブルな価格で販売されているので、ジビエの保存に
利用している方も多いと思います。
ただこれを利用している方は「真空パックで酸素を遮断出来るから長期保存も・・・」と考えてのことだと
思いますが、残念ながら、家庭用の真空パックに使われているシートでは、酸素バリア性が低いので、
市販品のように酸素を遮断出来ないケースがほとんどです。
※それでもジップロック+ラップで保管するよりも優秀ですが
 
これは昨今の環境問題に付随して素材に「塩ビ」が使われなくなったからで、もしも本格的な酸素バリア性が
欲しい場合は、業務用のシートを買うしかありませんが、一般家庭の冷凍庫では保管温度も高いので真空パック
で長期保存を狙うより、美味しい時期に早めに食べる方が良いと思います。