怪しい伝説2
以前、「怪しい伝説」と題しまして、狩猟用エアライフルにおける

「冬になると、弾速が低下して、着弾がズレる」

と言う伝説の真偽を検証した訳ですが、その中で、豆鉄砲もその扱いに難儀したコレなんですが


1070 hPa
1060 hPa
1050 hPa
1040 hPa
1030 hPa
1020 hPa
1013 hPa
1010 hPa
1000 hPa
990 hPa
980 hPa
35℃
1.207
1.195
1.184
1.173
1.162
1.150
1.142
1.139
1.128
1.116
1.105
30℃
1.227
1.216
1.204
1.193
1.181
1.170
1.162
1.158
1.147
1.135
1.124
25℃
1.248
1.236
1.225
1.213
1.201
1.190
1.182
1.178
1.166
1.155
1.143
20℃
1.270
1.258
1.246
1.234
1.222
1.211
1.202
1.199
1.187
1.175
1.163
15℃
1.293
1.280
1.268
1.256
1.244
1.232
1.224
1.220
1.208
1.196
1.184
10℃
1.316
1.304
1.291
1.279
1.267
1.254
1.246
1.242
1.230
1.218
1.205
5℃
1.340
1.328
1.315
1.303
1.290
1.278
1.269
1.265
1.253
1.240
1.227
0℃
1.365
1.353
1.340
1.327
1.314
1.302
1.293
1.289
1.276
1.263
1.251

当時は豆鉄砲も、このデータが着弾位置にどのような影響を与えるのかを検証する方法が解らなか
ったので、結局、『最大で20%の差が出ます』とお茶を濁していた訳ですが、正直、この表の数値
を元に、「グルーピングが〜」とか「弾道が〜」と語られるのは、まったくの不本意なんですね。
ただ、そう言う事を語る輩と言うのが、どうしても一定数おりまして、中にはですね、

「上がったから下げる」←どうやら(空気の密度が)上がったら(弾速を)下げると言うコトらしい(汗)

と言うような、かつての「KKCの『未常識』詐欺」みたいなコトを真顔で言う輩が居る訳です。
それでですね、豆鉄砲のようにグルーピングが悪ければ『自分の腕が悪いんだ』と思える人はそう言
のを聞いても信じないでしょうが、世の中にはウブな方が一定数いらっしゃいますので、そう言う方
は信じちゃうんですね、実に都合の良い話なんで(笑)

とまぁ、ここまでは強気な発言をしてみた訳ですが、でもひょっとしたら、本当にまだ発見されてい
ない「未常識」の可能性もある訳です。であれば、エアライフル業界の発展の為、足りない知恵を絞
ってでも「常識」に変えることに、やぶさかではないので、空気の密度が着弾位置にどのように影響
するのかを検証する方法を思い付いたので、早速、検証してみる事にしました。

空気抵抗の計算
そんな訳で、空気抵抗(F)を求める計算式は

空気抵抗(F)=空気密度(p)×空気抵抗係数(Cd)×投影面積(s)×速度(v)×速度(v)/2

と言う式で求められます。ここでちょっと問題になるのは空気抵抗係数です。豆鉄砲、当然のコトな
から各ペレットの空気抵抗係数(Cd)なんて知りません。

じゃあ調べろよって話になる訳で、wikiとかで調べれば確かに公式もある訳ですが、ここでwikiを見
た方なら解るでしょうが、空気抵抗係数(Cd)を調べるのには、ペレットの表面積を調べる必要がある
んですよ。それでですね、この表面積を調べるのには、ペレットと言うのは回転体なので、ペレット
を回転体として表示出来る方程式を導き出して、その式を元に積分計算とかする必要がある訳ですよ。
多分この辺りで、このサイトを見ている方の8割はナニを言っているのか訳が解らなくなっているで
しょうが(豆鉄砲も知恵熱が出る寸前)とにかくですね、恐ろしく数学的な才能が必要な訳ですよ(汗)

しかしここで諦めたら、エアライフル業界の発展が止まってしまうので、それならば何か別な数値か
ら、空気抵抗係数(Cd)が求められないかと考えて、とりあえず調べれば、空気抵抗係数とかが出てき
そうなBC値に当たりをつけて調べてみることにしました。

BC値 Ballistic Coefficient
これは日本語にすると『弾道係数』と言うモノでして、元々は弾道計算をする時に計算値と実測値の
違いを少しでも小さくする為に使う数値のようです。まぁこの辺りの正しい解釈にも色々あるでしょ
うが、今回はその真実を知るコトが目的では無いので、まぁそう言うコトにしといて下さい(笑)。
それで、この数値が大きい程、空力的に良い弾なんだそうで、某21grの弾なんぞはこの数値をとらま
えて、FX弾よりも優秀だと言われています。
それでこのBCについてですが、当然のことながら日本語で書いてある資料なんぞありませんが、海外
のwikiを見てみますとラッキーにも公式まで出ていまして細かい部分は省略しますが、どうやら簡易
的なのかも知れませんが

BC=弾の密度(p)×弾の長さ(l)/空気抵抗係数(Cd)

で求められるみたいなんですよ。そうするとですね、BC値が判明していればこの公式を変換すれば弾
の形状による、素の空気抵抗係数(Cd)が出てしまうので、ちょっと計算してみました。

BC値
弾の長さ
Cd値
FX   16gr
0.032
0.292
9.13
某新型 18gr
0.038
0.303
7.97
某有名 21gr
0.036
0.333
9.25


※この値は単純に弾の長さ/BCから求めた数値ですので、
本当のCd値ではありません。材料の密度の違いが考慮され
ていないと騒ぐ方も居るかも知れませんが、恐らく誤差の範囲
だと思うので問題は無いと思います。

なんだよ、某有名21grの弾のBC値って、単純に弾の長さで数値を稼いでいただけなのかよいるだけなの?(笑)

※またまた大ポカしちゃいまして、一次方程式の変換を間違えてCd値の計算式が違っていました。(汗)
  とりあえず何事もなかったように修正しておいて、某有名21grの弾へのコメントもトーンダウンしときました(笑)

空気抵抗の計算2
そんな訳で、無事に計算の準備が整いました。あとは一旦、空気抵抗(F)の値を求めて、その値を基
準にして速度を逆算するだけなんですが、ここで豆鉄砲気が付きました。同じ弾を使っていて、変化
するのは空気密度(p)だけなら、空気抵抗係数(Cd)なんて省略しても数学的にはokなハズ・・・
そうなると投影面積(s)も同じだから・・・

空気抵抗(F)=空気密度(p)×空気抵抗係数(Cd)×投影面積(s)×速度(v)×速度(v)/2
                   ※(赤字の部分は省略して計算出来ます)
で、いいんじゃないの?後は出てきた値と、それぞれの空気密度(p)を入力して

速度(v)=√(空気抵抗(F)/空気密度(p)×空気抵抗係数(Cd)×投影面積(s))
                         ※(赤字の部分は省略して計算出来ます)
で計算すれば速度が求められる訳ですよ、空気の密度の変化による弾速を求めるのが目的だし(笑)
いや〜無駄な努力しちゃいました(汗)

それでは計算してみましょう、条件として弾速は280m/sを基準とします。気象条件は猟期前の最終調
整頃の気温として15℃、気圧は1013hpとします。
 相当する弾速
(m/s)
1070hp
1013hp
980hp
35℃
282
290
295
30℃
280
287
292
25℃
277
285
290
20℃
275
283
287
15℃
272
280
285
10℃
270
278
282
5℃
268
275
280
0℃
265
272
277


50mでの予想される着弾位置
(cm)
1070hp
1013hp
980hp
35℃
0.22
1.05
1.52
30℃
-0.04
0.79
1.28
25℃
-0.31
0.54
1.03
20℃
-0.59
0.28
0.78
15℃
-0.88
0.00
0.51
10℃
-1.17
-0.28
0.24
5℃
-1.48
-0.57
-0.04
0℃
-1.80
-0.88
-0.34

え〜どうやら猟期前に調整しておけば年間を通して問題無いと思うのは豆鉄砲だけでしょうか?
と言うかですね、一般的な人の平均グルーピング内で十分に収まる範囲ですよコレは(笑)
中には納得出来ない方もいらっしゃるでしょうから、一応、35℃、980hpの時に280m/sを基準にした
場合の弾速だけ示しておきますと・・・
 相当する弾速
(m/s)
1070hp
1013hp
980hp
35℃
268
275
280
30℃
266
273
278
25℃
263
271
275
20℃
261
268
273
15℃
259
266
270
10℃
257
264
268
5℃
254
261
266
0℃
252
259
263


50mでの予想される着弾位置
(cm)
1070hp
1013hp
980hp
35℃
-1.44
-0.52
0.00
30℃
-1.73
-0.81
-0.27
25℃
-2.02
-1.09
-0.54
20℃
-2.33
-1.37
-0.82
15℃
-2.66
-1.68
-1.12
10℃
-2.98
-1.99
-1.41
5℃
-3.32
-2.32
-1.73
0℃
-3.68
-2.66
-2.06

いや〜これをどう捉えるかは個人の自由ですが一応書いておきますと、35℃、980hpなんて台風の時
しか有り得ません。そして、その時には空気の密度よりも風の影響の方が遥かに強いでしょう。
と言うより、例え駆除とかであっても出撃なんて出来ないですし、そんな日に、室内射撃場でデータ
を取るなんて豆鉄砲はしたくないです。まぁ中には、野生動物の侵攻を食い止めると言う崇高な使命
の元、「嵐の時こそ船を出せ」とばかりに駆除に出撃しようとするアンポンタンな方も居るかも知れ
ませんが、遭難したら世間に迷惑が掛かるだけなんで、家でネコでも抱いといて下さい(笑)

そして真冬の0℃の時に、1070hpもある高気圧なんていうのも、豆鉄砲は日本の天気図で見たコトない
です。まぁ世界は広いんで、そう言う気象条件もあるのかも知れませんが、日本では考慮する意味は
無いと思いますがどうでしょう?。
それより、「35℃、980hp⇔0℃、1070hp」なんて言う最大で、空気の密度が約20%も変化する気象条
件よりも「35℃、1070hp⇔0℃、980hp」と言う、最大でも約4%程度しか空気の密度が変化しない気象
条件の方がまだ現実味がある気がします。一応、35℃、1070hpの時に280m/sを基準にした弾速も示し
ておきます。
 相当する弾速
(m/s)
1070hp
1013hp
980hp
35℃
280
288
293
30℃
278
285
290
25℃
275
283
288
20℃
273
281
285
15℃
271
278
283
10℃
268
276
280
5℃
266
273
278
0℃
263
271
275


50mでの予想される着弾位置
(cm)
1070hp
1013hp
980hp
35℃
0.00
0.84
1.32
30℃
-0.26
0.58
1.07
25℃
-0.53
0.32
0.83
20℃
-0.82
0.06
0.57
15℃
-1.11
-0.22
0.30
10℃
-1.41
-0.50
0.03
5℃
-1.72
-0.80
-0.26
0℃
-2.05
-1.11
-0.57

と言うか空気の密度による着弾の変化なんて、空気銃ごときでは無視してokですよ、
仮にどこぞのバカが・・・

「オレはミリ単位のグルーピングを追求して・・・」

なんて吼えても、そんなのは
「物事の本質が見えていないバカの寝言」
なんで無視すれば大丈夫ですよ(笑)

ちょ〜遠距離狙撃における、空気の密度が着弾に及ぼす影響
しかし、そうなってくると「物事の本質が見えていないバカ」とかが
 「スコープメーカーなんぞの出してる、PDAなんかの弾道計算ソフトは無意味なのかよ、ああん?」
と因縁とか付けて来そうなんで、それではここで、装薬ライフルの338ラプアを「ちょ〜遠距離」で
撃つケースを考えてみましょう。
なんで338ラプアかと言うと、それは豆鉄砲が装薬ライフルの知識が皆無な為、知り合いに事情を話
して聞いてみたら、「それなら338ラプアで決まりでしょ」と言われたからです(笑)。
そこで射撃距離は、弾速が音速を保ったままだと言われる「1km」に設定してみまして、弾速のデータ
はwikiにあった「弾頭重量250グレイン、初活力 約4800ft-lbs」に基づいて逆算して計算を行うと、
2940feet/s=896m/sなので計算しやすいように、初速900m/sに設定してみます。
そして比較し易いように先程と同様、気象条件は猟期前の最終調整頃の気温として15℃、気圧は1013
hpとしますと
 相当する弾速
(m/s)
1070hp
1013hp
980hp
35℃
906
932
947
30℃
899
924
939
25℃
891
916
931
20℃
884
908
923
15℃
876
900
915
10℃
868
892
907
5℃
860
884
899
0℃
852
876
890


1000mでの予想される着弾位置
(cm)
1070hp
1013hp
980hp
35℃
8.40
40.53
58.81
30℃
-1.48
30.64
49.42
25℃
-11.86
20.76
40.03
20℃
-22.73
10.87
30.15
15℃
-34.10
0.00
19.77
10℃
-45.47
-10.87
9.39
5℃
-57.33
-22.24
-1.48
0℃
-69.69
-34.10
-13.34

おお、さすがにこの距離になると、気温か気圧のどちらかが変化するだけで随分と着弾位置が変わり
ますね。正直、コレを見ると空気銃における、「空気密度の変化による着弾位置の変化」なんて、平
均グルーピング範囲に収まってしまう誤差みたいなモンですね。
豆鉄砲は、338ラプアでの1kmの平均グルーピングは知りませんが、軍隊とかで狙撃任務に使うコトを
考えれば、平均グルーピング範囲に収まる誤差の範囲を超えているんじゃないかと思うんで、PDAの弾
道計算ソフトは、ある程度は有効なのかな?と思いますが皆さんはどう思います?。

それでてすね、先程の「35℃、980hp⇔0℃、1070hp」なんて言う日本じゃ現実的でない気象環境も、
世界を舞台に活躍するようなスナイパー小説では有り得るのかも知れません、それはきっとこんな感
じなんでしょう、
主人公は、気温35℃、気圧980hpのハリケーンが上陸した熱帯のジャングルで、横殴りの雨が降る中、
ジッとその時を待ち続けます。するとハリケーンの目に入ったのか、一瞬の晴れ間がジャングルを包
み込みます。そしてその瞬間を狙って、1km先のターゲットの狙撃を行い成功させます。
狙撃を受けた現場は大混乱で、すぐに追跡部隊を送り出しますが、ハリケーンの目を抜けたジャング
ルは再び嵐となり、主人公はまんまと追跡部隊を振り切り無事に任務を成功させます。

そして翌日、スコープの調整はそのままに、今度はシベリアとかの気温0℃、気圧1070hpの晴れ間の
中、なんかの視察に来た1km先の要人とかの狙撃をする準備の為、主人公はスコープを調整する必要
があります。そこで、おもむろに懐からPDAの弾道計算ソフトを取り出すと、必要な項目を入力して
スコープの修正量が決定する訳です。そう言う時とかに、小道具として有効になると思いますので、
「すないぱ〜」とかを目指したり、憧れている人とか、たとえ空気銃しか持っていない方で、
「オレは、ミリ単位のグルーピングを追及している」と言う奇特な方は、PDAを買うと気分だけで
「一流すないぱ〜」になれるので、とってもオススメだと思います(笑)

でも結局は、実際の状況に近い条件で試射する方が、有効であり確実なんじゃないかと思いますけど、
その辺りどうなんでしょうね?まぁフィクションの世界だからイイのか(笑)。

そして、そろそろ勘の良い方ならお気づきだと思いますが、着弾位置に大きく影響をもたらすのは、
空気の密度なんかではなく、着弾までの時間だと言うコトです。つまりは弾の滞空時間が長くなれば
なる程、弾の落下量が大きくなり、距離や弾速による着弾のズレなどが、より大きくなります。

その他の着弾位置に影響するもの
今では随分とメジャーになった有名なものとして、ライフリングによるドリフトと言うのがあります。
要するにS410などの右に螺旋が切ってあるバレルでは、弾が右にズレれるってヤツですね。
これも調べますと、「プレセッション効果・ポアゾン効果・マグナス効果」の3つの効果の総合作用
なんだそうですよ。と言うコトはこれらを計算すれば、どの程度、弾がドリフトするのかが解ると言
うコトです。まぁ、空気の密度の変化が、着弾位置にどのような影響を与えるのかを考えるだけで
1年近くかかった豆鉄砲の頭では、ドリフト量の計算なんて何年かかるか判らないですよ、それに
その計算方法を考えるだけでも恐ろしいですね(笑)

でも今までの結果から推察すると、280m/sの弾速で50mまでの着弾時間は0.2秒を切ります。そうなる
と恐らくですが、皆さんの想像よりもドリフト量と言うのは少ないのではないでしょうか?
と言うより、空気の密度同様、平均グルーピング内に収まる範囲にしかならないのではないかと思い
ます。
まぁ反論したい方は、文句を垂れる前に、ご自分で計算方法と結果を提示して公表して下さい。
そうすれば、豆鉄砲の手間も減りますし、皆さんも納得出来て一石二鳥ですからね(笑)

ここまでのまとめ

今回の検証で解ったのは、スナイパー小説に出てくる、温度・気圧・密度が、空気銃ごときの最大
でも100m程度の射程では、影響を無視してokなんだと言うコトです。あと残るのは湿度・粘度・
コリオリの法則とかでしょうかね?湿度に関しては、1立方当たり1.2kg前後の空気の重さに対して
飽和水蒸気量を計算しても、g単位でしか無いので無視してokです。(35℃の飽和水蒸気量でも約40g)
空気の粘度に関しては、人間が活動出来る温度においては、粘度はほぼ一定と言うか、これも無視し
てokです。コリオリの法則も、空気銃の射程を考えれば、無視してokと言うか、そんなのを持ち出す
なんてナンセンスですよ。
結局、色々なエセ・射撃理論やインチキ・弾道理論と言うのがありましたが、そのどれもが自分に
都合の良いだけの、物理方程式も計算結果も存在しないものばかりでした。
そう言う方は『物理法則の壁は越えるコトが出来ない』と言うのが理解出来ないのでしょうかね?
皆様、当たらないのを銃のせいにする前に、自分の腕を疑い練習に励みましょう。