疑似科学の処方箋
この不景気のせいでしょうか、世の中を、ぼ〜っと眺めていると、随分と擬似科学な詐欺話が横行して
いるみたいですね〜。まぁ豆鉄砲も数年前に、疑似科学な詐欺話に遭遇しまして、内容はと言うと水の
話でして、なんでも活性水素を含む水を飲んでると、体内で活性酸素が発生した場合、活性水素と結び
ついて水に変化するんで体にイイんですよ〜ってな内容で、ついては、その活性水素の水を作る機械が
30万するんだけど、1コ買うと代理店の権利を持てるんで、次からはその機械が10万で買えるから、
知人・友人に売れば1台につき20万儲かるからどう?てな内容でした(笑) 
もともと活性酸素は不安定な物質なので、体内で発生した場合、なにかを酸化させて安定状態にしよう
としますが、このなにかが細胞だと大変なんだから、是非、活性水素の水を・・・ってのが詐欺師の
主張な訳なんですが、実際、普通に食事をしていれば、体内の抗酸化物質が身代わりになってくれるので、
なんの心配もないんですがね〜。まぁ、こう言うのが疑似科学を使った詐欺話な訳です。
 
さて、エアライフルにこの話を当てはめると、最近では弾速を測ってエアライフルの状態を知る方が増え
て来ました。まぁ、弾速を測るコト事態はイイと思うのですが、そのデーターの取り扱いを間違えて、
魔改造に手を出す方を見ていると痛々しいモノを感じてしまいます。
そして尚且つ、「自分は科学的に物事を論じている」なんて主張をしていると、あまりに不憫で涙が出て
しまいます。そんな訳で今回は、疑似科学の処方箋と題しまして、データーの統計学的取り扱いについて、
考えてみます。
 
平均値と標準偏差
エアライフルに限らず、どの世界でも良く使う統計学的手法ですね〜。エアライフル業界では、弾速とか
に良く利用されますよね〜「このエアライフルで○○弾を使うと、平均初速は××m/sだ」とかですね。
でも・・・「○○を変更したから、弾速が平均○○m/sアップ!」とか「○○のペレットはケースがプラ
から缶に変ったら、弾速が平均○○m/sダウンしてるから○○だ!」とか本当でしょうか?(笑)
そこで、次のグラフを見てもらいましょう。



グラフ内のA・Bの平均値は同じです。でもグラフの描く曲線が違っています。つまりバラつき(分布)が
違うと言うコトですね。このバラつき(分布)を統計学的手法で処理したのが標準偏差というモノです。
この標準偏差を求める方法ですが、電卓を叩いてシコシコ作ると言う方法もありますが、電卓も関数電卓が
必要で、手間も時間も掛かるので、excelを使って一気に出すのが楽なんですが、少し注意が必要です。
 
標本標準偏差と母標準偏差
データーの分布、つまりバラつきの度合いを示すものを偏差と言います。この偏差には2つの種類がありまして、
ひとつは標本標準偏差と言います。標本標準偏差のことを不偏分散の標準偏差と言うコトもあったりしますが、
標本標準偏差を求めるexcelの関数は、「STDEV」です。もうひとつは母標準偏差と言うのがありまして、
コッチはexcelの関数では、「STDEVP」があります。
「STDEV」と「STDEVP」の二つの偏差は呼び名は似ていますが、考え方の上で大きな違いがあるので、注意
が必要なんですが、標本標準偏差では、得られたデータは全体の集団(これを母集団と言います)の一部で
あり、全体の集団から抜き取られたデータである、という考えに基づいています。
 
そして、母標準偏差は、得られているデータすべてが考える対象の集団の要素である場合に使います。
例えば、ある銃を1万発撃って射撃を終了した後、廃銃にした場合、その1万発の射撃の初速データをすべて測定
したというような場合で、この1万発の初速の分布を対象に考える場合などがこれに該当します。
 
要するに普通に標準偏差を計算する時には、標本標準偏差の「STDEV」を使えってコトですね。
 
この標準偏差を求める2つの計算式の違いは、標本の個数nを「n-1」に置き換えて計算するしか違いが
ありません。ですからnが大きくなると次第に、それぞれの偏差の値は近づいてきます。
そしてコレが意味するのは、サンプル数を沢山取ると偏差の精度が上がると言うコトですね。
ですから、弾速データーを20発程度計測して平均値を出して比較しても、統計学的に意味が無いんで、
最低でも100発程度のデーターを集めてから計算をする必要があると思います。
※欲を言えば、1000発分のデーターが欲しい所です。
 


  A  
  B  
0
3
3
1
3
7
2
3
11
3
3
15
4
13
19
5
81
21
6
13
19
7
3
15
8
3
11
9
3
7
10
3
3
個数
131
131
平均
5
5
標準偏差
1.641
2.370
母標準偏差
1.635
2.361

先ほどのグラフのデーターの平均値と標準偏差です。コレを見ると、Aでは5±1.641の範囲が誤差で
あり、Bでは5±2.370が誤差の範囲であると判明します。
 
統計学的手法
豆鉄砲は現在、バレルクリーニングに、Otisのドライルブを利用しています。使い方としては、200〜250発
に1回程度のサイクルで、ドライルブでウェット状態にしたクリーニングペレットを3発+ドライ状態のクリー
ニングペレット2発+空撃ち2発をしています。そして1000発に1回位の割合で、ボアスネークを通しています。
しかし、この方法は、統計学的手法で辿り着いた結論ではありません。主観的にこの方法がイイ感じだった
からでして、ひょっとすると、もっと良い方法があるのかも知れません。しかし、なんでこんなクリーニング
方法を使うのかと言えば、バレル内の汚れをキレイに除去したいからです。
豆鉄砲はバレル内の汚れをウンコだと考えています。ですからウンコをした後にお尻をキレイにするのには、
トイレットペーパーで拭くより、ウォシュレットで拭いた方がキレイになると思っているからです。
まぁ、世の中には、ウンコを拭いた紙を後生大事に取っておいて、次のウンコを拭く時に使う方も居るよう
ですが、スカトロ趣味でもお持ちなんでしょうか?さて、適当に毒を吐いた所で、この2つのクリーニング
方法を統計学的手法を用いて証明する場合にはどう言った手順が必要なのか手順を示して見ましょう。
 
1.新品の同じ銃を15丁と、同じ程度の射撃技術を持った射手を15人準備する
2.銃を5丁づつ3グループに分けて、「クリーニング無し」「オーティス法」「うんこ法」に分ける
3.15人が同じ射場、同じ時間帯に同じ数だけ射撃を行う(1日1000発とか)そして、クリーニング方法以外は
 全ての条件を同一にする(充填圧、レスト台、弾、等)
4.「3」の実験を最低、3〜5回は繰り返す
 
こう言う実験を行うと、最低で1つの実験区で、3000発×5人の15000発分のデーターが取れます。
そしてこのデーターを元に、平均値、標準偏差を求めます。そして、それぞれのクリーニング法に
差があるかどうかはカイ二乗検定を用いるコトによって有意差があるのかどうかが判明します。
 
確かに、こう言う方法を使うと統計学的手法=科学的になるんですが、手間もお金も掛かり過ぎてしまいます。
ですから、豆鉄砲も含めて多くの方が、主観的な手法で、良いと思われる方法を採用しているかと思いますが、
別に個人レベルの趣味の世界なんで、その辺りは問題無いと思いますが、「たしなみ」として、科学的手法には、
こう言う統計学的アプローチもあるんだな〜と知っておくのは良いコトだと思います。
 
ここまでのまとめ

 
結局のトコロ、科学的だとかナントカ言う連中に限って、こういった統計学的手法なんて微塵も知らない
連中がほとんどです。ただ、統計学的手法を用いても、ある程度都合の良い結果を出す方法もあります。
例えば、サンプル数100であれば、実際は10〜20%余分に実験を行って、その中から都合の良いデーター
100コ分で統計処理を行うと言う方法ですね。しかし、サンプルの90%の数しか実験を行わず、残りの10%
分のデーターを自分の都合の良いように書き込めば、ソレは捏造以外のナニモノでもありません。
 
それでも、疑似科学を声高に喋る連中と言うのは、このような違いすら認識していないクズでして、
言ってみれば、
 
無知無教養のくせにプライドが高くてインテリに憧れている、
誰かから自分の見識の高さを褒められたがっている間抜け
 
でしかありません。
 
豆鉄砲も学生時代、統計学の授業には苦労しましたが、その苦労のおかげで、現在はある程度、統計学手法
について理解するコトが出来ます。若い頃の苦労は・・・って話ですね(笑)
そんな訳で、今からでも統計学を知りたいな〜と言う場合は、本を買うのも一つの方法ですが、以下の検索
ワードで検索をしてみて下さい。わかりやすく統計学について学べます。
 
ハンバーガーショップで学ぶ楽しい統計学
アイスクリーム屋さんで学ぶ楽しい統計学
 
ところでどなたか、豆鉄砲の常備薬知りませんか?パッケージに「バカに付けるクスリ」って書いてあるんですが・・・?(笑)