潤滑について
以前にペレットのコーティングについて、書いたんですが、その後も色々と調べ続けています。
そして、ネット・エアライフル業界では、コーティングが静かなブーム(違うか?)なので、今回は、
ペレットと銃身に使用する潤滑と潤滑剤について考える為の予備知識を紹介します。
その前に
今回の潤滑に関する予備知識は、車のエンジンの潤滑をベースに話を進めていきます。
と言うか、銃の潤滑についてのサイトなんで、海外を探せばあるでしょうが、日本語のサイトなんて、まずありません。
そう言う訳で、ご自分で、コーティングをする場合の判断基準のひとつにして頂ければ幸いです。
潤滑の種類
潤滑には、どうも4種類があるそうで、それぞれの簡単な説明をします
流体潤滑
文字通り、金属の間に油膜が十分に入って潤滑がされている状態で、普通にイメージする潤滑がコレにあたるようです
境界潤滑
流体潤滑よりも、薄い油膜で・・・とりあえず、メチャ薄い油膜でしょうか
極圧潤滑
非常に圧の掛かる面で、油膜を突き破って、金属同士が接触している状態で、このままいくと焼き付きを起こします
固体潤滑
オイルではない物質で、潤滑性能を持ったモノで潤滑を行なう
多分ですが、銃身とペレットを潤滑させる場合は、ペレットのスカートがエアーの圧力で、銃身に密着するので、
極圧潤滑〜固体潤滑の世界になるのではないかと思います。
それでは、本題に入って潤滑剤のコトになる訳ですが、コレには、液体の潤滑剤か、固体潤滑性能を持つモノしか
有りませんので、それぞれについて、解った範囲で説明します。
液体潤滑剤の世界
オイルの話
世間で売られてる、ペレットの鉛付着防止の油の成分はナニか分かりませんが、海外のフィールドターゲット関係のサイトでは
使用を勧めていますが、どうなんでしょう・・・?
以前、バイクの雑誌で、エンジンオイルは、ピストンスピードが30m/s(秒速)を超えると、油膜切れが起こるとありました。
確かに色々なエンジンのピストンスピードを計算すると、そのスピード以下です。
漫画の話で恐縮ですが、とある車の漫画の中で、こんなセリフがあります「11000回転までキチッリ回せ」車はレース用エンジンを
積んだAE86なんですが、この時のピストンスピードを計算するとやっぱり30m/s以下なんです・・・。
そう言う訳で、知り合いの元、船のエンジンのエンジニアに色々と聞いてみると・・・
「その油膜切れを起こすスピードのコトは初めて聞いたけど、仮にエンジンオイルとしては使えない優秀なオイルがあっても、
その10倍のスピードでの潤滑はムリじゃないかな・・・」と言う回答でした。
液体潤滑剤と聞いて思い浮かぶのは、オイルだけでして・・・その他には水なんかも潤滑剤として使えるのでしょうが、
銃身と弾には使える訳はないと思います。
それよりも、銃身には「オイルは付けるな」と言うのが銃の世界の掟のようですし、液体潤滑剤の世界はココでお終いです。
オイル以外で、液体潤滑剤に使えそうなモノがあったら教えて下さい。
固体潤滑の世界
固体潤滑と言うのは、そのモノ自体に潤滑性能がある物質と言うコトでした。
当然、液体の潤滑剤なんかが無くても潤滑可能と言うコトです。
一昔前は、セラミックには固体潤滑性能があるから、セラミックエンジンを作れば小さくて、
パワーのあるエンジンが出来ると言う話を子供の頃聞いた覚えがありますが・・・ドコにあるんでしょうか、セラミックエンジン・・・(笑)
で、固体潤滑剤を調べていくと、色々と判明しました。現在使用されている固体潤滑剤として、鉛は軟質金属に分類され、
他にも金、銀、イリジウム、バリウムなんかがあるそうです。二硫化モリブデンは、層状物質に分類され、他に二硫化タングステン、
(インタカレーションした)グラファイト、フッ化グラファイトなどなと色々とありました。
このなかで、グラファイトに注意書きとして書いてあるインタカレーションについて調べましたが、ほとんど意味不明でした(笑)、
どうも層状にしたってコトではないか?と言うトコまでは判明しましたがソレ以上はサッパリ不明です(笑)
今の潤滑のトレンド
先程書いたように、一昔前は、セラミックによる潤滑に熱い視線が送られていましたが、今はほとんど使用されていないようです。
その理由ですが、セラミックが硬すぎて、本来潤滑するべき部分を削ってしまう為らしいです。
一時期は、ヤマハのモトクロスバイクのシリンダーにセラミックコーティングがされていたと言う話もありましたが、現在は聞きません、
それに、銃身と弾の間の潤滑にセラミックを使えば、銃身も弾も削れてしまうハズです。
まぁ、銃身自体にセラミックコーティングすればいいのでしょうが、素人にそんな真似は出来ませんし、
未だセラミックコーティングの銃身が世に出ていない以上、ムリな話でして・・・そんな訳で、今の潤滑剤のトレンドは、
適度に潤滑性能を持ち、本来潤滑させるモノに負担を掛けないものがトレンドとなっているようです
テフロン
テフロンって言うのは、ホントはデュポン社の登録商標だそうで、
ホントはポリフッ化エチレンとかポリテトラフルオロエチレンと言う舌を噛みそうな名前がホントの名前だそうです。
このテフロン、摩擦係数が氷並に小さいんで(0.02)潤滑剤として有望に感じますが、テフロンを作っている、デュポン社では、
そもそも圧の掛かる部分での潤滑にテフロンを使うなと言っているらしいです。
そもそもテフロンを使うのは、圧の掛からない部分に使いなさいと言うコトでした。
中には、テフロンは摩擦が小さいから、テフロンの膜が破れる前に弾は通過すると言う人も居るようですが、それなら、
テフロンのフライパンに金属ヘラを使っても良さそうなモンなんですが・・・どうでしょう?
二硫化モリブデン
コレはスラッグ射撃をする方には有名な固体潤滑剤です。
そもそも二硫化モリブデンの構造というのは、鉱物の雲母のように、積層構造をしているそうで、イメージとしては、
重ねた新聞紙やトランブで、接触すると剥離して、潤滑を行うそうです。
ただ、豆鉄砲は化学がダメなんで不明ですが、硫黄と言う成分は腐食を起こします。
二硫化モリブデンに含まれる硫黄がどの程度銃身に対してダメージを与えるのかサッパリ分かりません。
ただ、スラッグで、モリブデンコートをしている方達から、「銃身が腐食した〜」って話は聞いたコトが無いので、
とりあえず大丈夫なんでしょうか?
それと、黒鉛を製造しているメーカーのページを覗いた所、二硫化モリブデンはグラファイトに比べ、
耐荷重性と減摩性にすぐれており、極圧潤滑剤としての使用に最適とありました。
しかしそのページの部分に恐らく紹介した製品の耐圧がでていたのですが、「耐圧=28.000kg/cm2」とありました。
その他に、窒化ホウ素と言うのが紹介されていましたが、コレは熱安定が良く、白色の固体潤滑剤だそうです。
グラファイト
最初から、ペレットにコーティングされていると言われる物質です。
グラファイトには「潤滑性」、「導電性」、「耐酸、耐アルカリ性に優れる」と言う4大特性があるそうです。
このうち潤滑性で使われるモノに鉛筆や新幹線のパンタグラフや自動車のブレーキパットがあるそうで、
他にもアルミホイルやエンジンのクランクシャフトの製造にも使用されるそうです。
で、このグラファイトの結晶構造も規則正しい層状になっているそうで、この部分が高い潤滑性の秘密のようです。
豆鉄砲が以前紹介した、鉛筆によるグラファイトコーティングですが、鉛筆の材料はグラファイトな訳でして、色々調べると、
なんでも6B以上の鉛筆の成分は、ほぼ100%グラファイトと言うコトでした。
ただ、豆鉄砲は現在、このグラファイトに関しては、弾の製造メーカーが、製造時に離型剤として使用しているのではないか?
と思っています。
ただ、このグラファイトですが、先程書いた、黒鉛を製造しているメーカーの説明によると、結構なハイテク素材のようで、
今の携帯電話のバッテリーの材料になったりしているそうで、メーカー曰く「縁の下の力持ち」と説明していました。
銃身と弾の間・・・
銃身には、溝が彫ってあり、その螺旋に掘られた溝にそって弾が回転して、ターゲットに飛んでいくと言うのが、
エアライフルの世界を齧ってしまった人が持つイメージだと思います。
で、この溝に関してですが、イメージとして、
5.5ミリサイズの銃身の場合、5.5ミリの穴の開いたパイプに溝が掘られてるって言う
イメージを持った人が多いんではないでしょうか?
豆鉄砲も最初に持ったイメージはソレだったんですが、よくよく考えてみれば、ソレだと弾は回転するハズもなく滑空していく
ハズです。
そう言う訳で、実際は、溝が掘られた部分を含んで5.5ミリだと思うんです。
で、溝と溝の間のレールの上で無理矢理、弾を回転させていると言うコトです。
こうすれば、弾は回転するハズですが、銃身に使われている鋼と弾に使われている鉛は、
上で言うトコの極圧潤滑になってる訳です。
更に鉛は冶金工学上、付着しやすい金属なんで、銃身に鉛が付着する訳です。
この付着した鉛は、銃を設計した者にとっては、無い方がイイと思う訳です。
ですから、装薬銃では、ソルベントなどの薬品で銅や鉛を溶かし、それらを除去する訳ですが、プレチャージのエアライフルの場合、
装薬ライフルと違って、銃身の一部に穴が開いていて、ソコから高圧の空気を噴出す訳でして、
その先にあるバルブ部分に装薬ライフルで使うソルベントなどの薬品が入って、気密性が悪くなったり無くなれば意味が有りません。
そんな訳で、エアライフルユーザーの中には、薬品を使ってのクリーニングをする人は少ないのではないかと思います
(とくに初心者では)クリーニングをしても、せいぜいクリーニングペレットか細く切った布を銃身に通して
(ドライ状態のクリーニングで)終わりだと思いますが、この作業で鉛が落ちるハズはありません。
コレで鉛がおちれば、スラッグ射撃をする人は簡単にクリーニングが出来る訳で、
わざわざモリブデンコートの弾なんぞ使うハズは有りません。
以前、「うっちゃん」に、スラッグ射撃に使う銃身を見せてもらったコトがあります。
幸いと言うか銃身内に鉛が付着した状態で「結構、鉛が付着しているモンですね〜」と素直に言ってしまったんですが
(本人は相当に恥じを感じたようで、後で念入りに掃除をしたとのコトでした)その付着状態を見ると、
薬室側から20〜30cm辺りまでに鉛が魚の鱗のようにポツポツ付着しており、先端側は鏡のように光っていました。
スラッグ銃とエアライフルを同じ土俵で比較する訳には行きませんが(発射速度が違いすぎる)恐らく、
鉛が付着するのは同じようなポイントではないでしょうか?
このコトを踏まえて仮説を立てるとすると、発射された弾は、最初は銃身のサイズより大きい為、銃身に鉛を付着させたり、
銃身によって銃身のサイズと同じ大きさに変形しながら銃身内を通過していき、サイズが適正化した途中からは、
銃身に鉛が付着されるコトが少なく射出されると言ったトコでしょうか?
もしそうであれば、弾のサイズが適正化される間、銃身と弾の間で、うまく潤滑を行えば、
鉛の付着は相当に少なくなるのではないでしょうか?
フライヤーに関する豆鉄砲の仮説
エアライフル関連の本を見ていると、フライヤーって言葉が良く書いてあります。
コレは数発に1発の割合で、弾が狙ったトコ以外に着弾する現象なんですが、この原因を豆鉄砲は、
ペレットの偏磨耗と考えています。
ペレットが銃身との摩擦によって、磨耗し、バランスが崩れて(偏重心が発生し)フライヤーが起きる。
ペレットを進行方向を軸とした回転体と考えた時、偏磨耗によってそのバランスは崩れるハズです
(バランスが崩れたコマのようにフラフラと)。
ただ、このバランスに関して、偏磨耗って言ったって、ペレットの磨耗程度で大した事ないんじゃないの?
考える方もいるでしょうが、車のホイールにだって、あの数キロ重量に対して、数グラムの重りを取り付けてバランスを
とっている訳で、豆鉄砲としては、回転するモノのバランスは重要だと考えています。
あと、銃身に鉛が付着すると、ますます付着した鉛によって、ペレットの偏磨耗が促進されると思います。
更に、ある程度の厚さで銃身に蓄積した鉛は、ペレットによって、掻き取られると考えます・・・
こうなると、ペレットに付着する鉛のカスも偏重心の原因になるかも・・・?
そんな訳で、豆鉄砲が出した結論(仮説)として、
1.ペレットの偏磨耗や鉛のカスの付着による、偏重心によって、多分グルーピングは低下する。
2.鉛除去には、ソルベントなどの薬品を使用する必要があるが、バルブへの影響を考えると、出来るだけ使用したくない。
以上の点から、導き出される結論は、銃身や弾に何らかの処理を行ない、銃身への鉛付着の防止を行うというコトです。
そうなると、「二硫化モリブデンで決まりじゃん!」と言う話になるんですが、添加剤と言うのは、違う種類のモノを混合しても、
意味が無く、場合によっては、効果が低減するそうです(場合によっては相乗効果もあるらしい)。
ですから、二硫化モリブデンで弾をコーティングするなら、弾に付いたグラファイトを除去してから行う方がイイと思います。
ただ豆鉄砲の場合、ソレが面倒なので、当分は鉛筆によるグラファイトコーティングを続けようと思っています。
ここまでのまとめ
色々と書きましたが、コレが決定打と言うモノはありません。
上に書いたコトを参考に、ペレットや銃身のコーティング剤を選択し、実験されてはどうでしょう?
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